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2013年3月20日 (水)

S-16 木更津の平成の庚申塔にみる像容変化の面白さ

 2013年3月10日、房総石造文化財研究会の石仏見学会で、木更津周辺の石仏をご案内いただきました。
 中世の五輪塔のある古刹なども多く、江戸文化の繁栄を映し出す丸彫りの大きな石仏や子安像塔、そしてたくさんの庚申塔を拝見しました。
 その中で、ちょっと興味深い庚申塔をご紹介します。

 130310_265見学会の終わりごろ、木更津駅前の中央1丁目の戸隠神社に寄りました。
 大きな寺院に挟まれた小さな神社で、そこに真新しい3基の庚申塔があります。

 脇に「庚申塔由来」という石碑があり、庚申待と庚申塔についての解説のあと次のように記されていました。

「以前からこの神社に建てられていた庚申塔(江戸前期から江戸後期)が著しく風化したため、ここに三基新たに復元し末永く供養するものである。
   総代 ○川○雄
   外  氏子一同
   施工  (有)川島石材工業
 平成二十年十二月吉日 建立 」

 3基の庚申塔は、現代の石工の作品として丁寧に立派にできています。
 その像容は、この日の見学会で特に印象に残った庚申塔をモデルにしていると、すぐわかりました。

 まずは、戸隠神社の右端の平成塔と、木更津市吾妻1丁目(新宿)平等院の天蓋のある延宝八年(1680)庚申塔

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 六臂の青面金剛像で、かなり忠実に模していますが、天蓋に付属する幡や持ち物などは、本来のもとの形を知らず図像化しています。
 両脇の鳥の形も、延宝八年塔では、かすかですが鶏らしくちゃんと足がついているのに、平成塔では、まるで小鳥のよう。
 でも、木更津を代表する庚申塔の図像を、このような形で残そうとする志は評価したいですね。

 次は、戸隠神社の中央の塔、これは木更津市江川の光明寺の貞享二年(1685)庚申塔がモデルになっています。

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 130310_184
 江川光明寺の二童子のある貞享二年塔は、面白い像容で注目されている庚申塔で、この日もかなり話題になりました。
 下部の四夜叉か三猿か、遠目では判断に迷う像です。
              
 石工がよくわからず、三猿と混同して「三夜叉」を浮き彫りし、あとでこれはまずいと思ったのか、後の人が足したのか、左横に小さく夜叉像1体を加えてあります。

 これが、戸隠神社中央の平成塔では、三猿のようにうずくまった「三夜叉」像になっています。

 また貞享二年塔の優れたデザインの羂索は、省略化されただのリングになっているのは、ちょっと残念。上部の日月も、左右同じ日輪になってしまっています。
 まれに円でも満月を表現する場合もありますが、オリジナルは、ちゃんと日月の区別をつけて彫ってあります。

 最後に戸隠神社左端の平成塔。これはすぐにモデルとおもわれる古塔が木更津市内では思いつかないのですが、戸隠神社に隣接した東岸寺の天明二年(1782)塔によく似ています。

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 日月は思い切ってデフォルメし簡略化していますが、意味は汲んでいます。130310_266
 持ち物もよくできていますが、問題は、頭部中央の「馬頭」像です。
 あ~、これは「馬頭観音」と混同している! 本来はどくろか蛇でしょうが、古い塔では風化してよくわからなくなっていることが多く、現代の石工さんは、憤怒顔によく似合う「馬頭」をつけてみたのでしょう。

 でも平成の石工さんを、もの知らずと思ってはいけないと思います。
 江戸時代の石工さんも見よう見まねで、さまざまな形の庚申塔を造ってきました。
 そもそも、庚申塔に青面金剛像を採用したはじめから、その正体は不明で、儀軌に描かれた像容も解釈によって異なり、また石工も意味不明なところは創意工夫で造形してきたのですから。

 そのため、私たちは、地域や時代ごとに、あるいは石工の系統ごとに、さまざまに変化した青面金剛像の庚申塔を見ることができるのです。
 厳密な儀軌に縛られていないということで、庚申塔と子安像塔は、まさに庶民文化を示す石仏だと感じました。

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