J-3 メビウスの輪?五領ヶ台式土器の突起の不思議
八千代市の上谷遺跡では、その広い発掘面積に比べ、縄文土器は早期~中期の土器片がいくらか出ている程度です。
この土器片も外側を上にして机の上に無造作に寝かされておいてありました。
深鉢?の上の部分の土器片。縄文に沈線で四角く区切ったシンプルな紋様がついていて、五領ヶ台式だそうです。
博物館のガラスケースにただ入っていただけなら、きっと振り向きもせず通り過ぎていたことでしょう。
でも手にとって、よく見ると口縁部に繊細な刻み目が帯のようについていてその帯は、途中で湾曲し、裏側へと回り込んでいます。
私はこの土器片を、鉢として使われていたその頃のように、立ててみたくなりました。
外側からの口縁のふくらみは、ここで車線変更するように、器の内側へと続き、内側には平行する線と斜めの線できれいなベルトの模様が口の部分に廻っていました。
器の外から内側へと視線を誘う不思議な紋様です。
きっと一周すると、また内から外へと、メビウスの輪のように、あるいはだまし絵のように楽しい錯覚をさせてくれるのでしょう。(このだまし絵のような口縁部の突起を、どうやって実測図で表現するのでしょうか。)
三角に湾曲した部分にも沈線でちゃんと斜め格子の模様が入っていました。
家族の団欒の真ん中に据えられて、斜め上から飽かず眺められていた鉢だったのことでしょう。
五領ヶ台式土器は、中期初頭、関東~中部地方の土器で、はなやかな勝坂式土器に先行する土器形式とのこと。
中期といえば、日本海側はあの火炎土器が燃え上がっていたころでしょうか。その火炎土器のかけらが、茨城県大洗町でも拾えるそうです。(⇒一考古学徒の思うところ)
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コメント
土器もこれだけアップで報告していただけると,ありがたいですね。
>火炎土器
拾えるとは言ってないですよ(笑)。拾ったという子供の情報をお伝えした段階で,現時点では可能性がある...止まり。でも楽しみですね。期待はしているんです。
投稿: とら | 2005年5月19日 (木) 20:59